屋台なまず

「バインミー1本でいこう!」


まず、バインミーというものを知らない人の為に


バインミーとはベトナムの食べ物で、簡単にいうとサンドイッチみたいなもの。

フランスパンに切れ目を入れて、そこにレバーのパテとかナマスとか、肉とか野菜とかパクチーだとか入れて、ヌックマムという魚醤を振りかけたりして食べる、ベトナム庶民のいわゆるファーストフードである。



これ1本でいこう!っていうのは、やっちんとあきちゃんと1歳になったばかりのウタチャンが、小さなワゴン車を改造して移動屋台を始めるにあたり、いろいろあるだろう屋台的な料理の中から、例の「バインミー」をチョイスし、これ1本で勝負するという決死の言葉なのである。



やっちんとあきちゃんは10年以上も昔の下北沢で出会った友達。



やっちんは出会ってすぐに下北沢食品市場っていう、昔の闇市みたいな場所で「なまず」っていうバーを始め、そこがみんなの溜まり場になってたから、しょっ中飲んでたオトモダチ。


あきちゃんもやっぱり下北沢一番街の「ネバーネバーランド」ってバーで働いてたから、会うときはいっつもおたがい酔っ払い。



そんな二人が結婚して、下北沢もどんどん変わって、やっちんのやってたバー「なまず」も都市計画の煽りで取り壊しが決まり、とうとう二人は長らく住んだ下北沢を離れることに決める。

移住先はやっちんの故郷である群馬県高崎。


近くを鏑川っていう一級河川が流れるのどかな田舎街。一階建ての平屋で、家の中には「なまず」と「ネバーネバーランド」の入り口の扉が置いてある。


二人はとりあえず近くのゴルフ場なんかで働きながら、喧騒の渦巻く東京とは真逆の環境で生活を始める。そんな中でやっちんは車の免許と小さなワゴン車を手に入れ、あきちゃんはお腹にウタチャンを授かり、木が少しづつ根を伸ばしていくように、新しい生活も新しくなくなりかけたころに、やっちんとあきちゃんは小さなワゴン車を移動式屋台「なまず号」に改造するのである。



屋台「なまず」





その後、無事ウタチャンを出産し、メンバーは三人となり、オリジナル「バインミー」を布教する為の新たな冒険をスタートさせる。


一度、古巣である下北沢でも屋台を開いたが、昔の友達も集まり、あっという間に完売。寂しそうに「バインミー」の具だけを食べているものもいたほど(笑)


今は地元群馬を中心に活動場所を広げている最中だが、是非いろんな街に突撃してオモシロオカシなストーリーを展開してもらいたいものである。




先日、我が家に三人が遊びに来た。

やはり、今後の屋台「なまず」の話しに花が咲く。

確かに楽な道ではないかもしれないが、もうすでに「なまず号」と「バインミー」はそこにあるのだ。


いつだって出発する準備が整っていれば、旅は旅人の思うがまま


「バインミー1本でいこう!」


と、杯をぶつけ合って大笑いした夜だったのだ。



2015/8/23 成田雲助