うらめしや〜 

うらめしや〜

連日厳しい暑さが続いておりますが、皆様いかがお過ごしでしょうか?

夜になっても気温が下がらず、寝るときもエアコンをつけっぱなしにして体が冷えきって目を覚ます。なんてことをしていると、夏風邪や夏バテで体を壊してしまうという方も多いようです。



ところで昔の人達は、夏の暑い盛りにさまざまな工夫を凝らして涼を取っていたと伺います。

打ち水をして涼しさを呼んでみたり、軒に赤い風鈴をぶら下げてみたり、鉢にたっぷりの水を入れて、中を泳ぐ金魚を鑑賞したりと、エアコンや扇風機のない時代ですから、体は暑くてもせめて心の中は涼やかに、とでも考えたのかもしれません。

そんな中でも幽霊の絵を飾って涼を楽しんでいたという方もおられた様で御座いますす。

幽霊というのは昔から怖いものと相場が決まっておりますが、寝苦しい熱帯夜の丑三つ時、ふと目が覚め、柳の木の下でうらめしそうにこちらを見ている幽霊の絵なぞが床の間にでも飾ってありますと、やはり背筋がゾクーっとして涼しくなる。

しかしながら、涼はとれても寝付きは悪くなる。そんなところでございましょうか。



ところで、幽霊といえば、死装束と呼ばれる白い着物を着て、頭には天冠(てんかん)と呼ばれる三角の白い布を付け、体が透けていて、何といっても足がない。といったイメージではないでしょうか。

 

こんな話しがございます。



昔、とある古道具屋を物色していた男の目に、一つのかまどが止まった。古道具屋の主人はかまどを三円で売り、その男の家まで運んだ。しかしその日の夜に、昼方かまどを買って行った男が戻ってきて、古道具屋の戸口をどんどんと叩いた。

その男が言うには、夜寝ていたらかまどから幽霊が現れたのでかまどを引き取って欲しいという。仕方がなく古道具屋の規約通り、半額の一円五十銭を男に渡し、店頭に並べるとまた売れた。そして夜になるとまた戻ってきて一円五十銭で下取り。

品物は無くならないのに一円五十銭儲かると喜んでいたが、そのうち幽霊のでる道具を売る店などと呼ばれる様になり、夫婦で相談した上で、かまどに一円を付けて引き取ってもらうことにした。

さてある日のこと、幽霊なんぞ怖くないという度胸のある男が勘当中の生薬屋の若旦那とそのかまどを引き取ることになった。かまどと約束の一円をもらい、二人で担いで帰る途中、よろけてかまどをドブ板にぶつけてしまう。するとその拍子にかまどから三百円が出てきた。二人は山分けにして、若旦那は吉原に、その男は大喜びで金を持って賭博場へ。

しかしながら、二人はあっという間に金を使い果たしてしまい、しょうがないから家に帰って寝ることにした。その晩、若旦那のところへ、青白い幽霊が現れて、金を返せと言う。若旦那は悲鳴をあげて気絶するが、その声を聞きつけた男が駆け込んできて事情を知る。そこでこれは若旦那の親元から金を借りて返さないと、毎晩幽霊が現れるに違いないと、翌日若旦那の親元から三百円を借りて、夜中まで待つことに。夜は深まり、丑三つ時、かまどからぼうっという青白い光と共に幽霊が現れた。度胸だけはある男、怖がらず身の上を聞いてやると、幽霊は生前左官屋で博打好きだったという。ある晩行った博打で大儲けして、金を隠しておこうと商売物のかまどに塗りこんで、ふぐで一杯やったら、それに当たって敢え無く死んでしまった。

話しを聞いた男は同情し、そんな話しなら若旦那の親元から持ってきた金を百五十円ずつ半分に分けようと提案する。

幽霊もそれはありがたいと男の話しに納得したところで、男は幽霊にこうけしかける。

「そんなら百五十円ずつ手にしたところでお互い博打打ち、ここで一つ博打を打って金をどっちかに押しつけちまおう」

一発勝負で軍配は男に。

幽霊は情けない声でもう一度勝負してくれと懇願する。

しかし、幽霊はもうすっからかん。男はおまえさんにはもう金はねえじゃないかと幽霊の願いを突っぱねる。

すると幽霊は

「旦那、私は幽霊でございます。金はなくとも決して足は出しません」

 

「うらめしや~」と出てきたものの、恨み辛みは人の世のもの

六文銭までまきあげられて、三途の川さえ渡れない…

2015/8/3 成田雲助